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theoryandpath
2024.01.26

2023年に読んだ「よい本」のご紹介

前回のブログでも少し書きましたが、本日のテーマはです!

今回は、2023年に読んだ本の中から「今後の人生でこれは外せないかも」という漠然とした感覚を基準にして選びました。

2023年のベストセレクションにしようかとも思いましたが、良い本を読んだら都度このブログでご紹介していたことに気付き、急遽内容を変更しております。
それに、どれが一番だとか順位は付けられないな、とも思ったので。

これを読んで興味を持った方が本屋に足を運んでくれることを祈りつつ。
最後までどうぞよろしくお願いします。

本の口コミ

序盤からいきなり脱線しますが、皆さん本の口コミって参考にしますか?
最近はネット通販が当たり前になり、本に至っては電子化の一途を辿る一方です。そしてどうやら人々は「失敗したくない」らしい。

お金を出して購入し時間をかけて読んだ本が自分好みじゃなかった時に、大いなる無駄を感じてしまうんでしょうね。そしてそれを回避するために、口コミや書評をじっくり見て「読むか読まないか」を決める。確かに合理的です。

中にはネタバレを読んでから買うかどうかを決める人もいるそうで。
人の感性はもちろんそれぞれですが、色んな人がいるものだなぁと嘆息する瞬間です。

通販サイトなんかの口コミ欄には、ネタバレの有無を問わず多くの感想が乱立します。
その多くは自分にとって面白かったかどうかを主軸に書かれていますが、当然ながら結構な割合で「人によるだろ…」と言いたくなる内容が書かれている気がします。

本の口コミは「悪かったこと」を書いて人の手を本から遠ざけるものではなく、「良かったこと」を書いて人の手に本を行き渡らせるものであってほしいな、と思ったり。

私はというと、帯と裏表紙のあらすじを含めた情報、ぺらっとめくった1〜2行目を見て購入するタイプです。読んだ人の感想は基本的に気にしません。

好みでない作品に出会うことも極まれにありますが、それは自分の好みを深く知れるきっかけでもある、などとトンデモポジティブシンキングで生きております。

何が言いたいかって、このブログでは基本的に「良かったこと」だけを書くのであなたが良いと思ったらぜひ手に取ってみてね、ということでした。

『サーチライトと誘蛾灯』櫻田智也

【あらすじ】

昆虫オタクのとぼけた青年・魞沢泉。昆虫目当てに各地に現れる飄々とした彼はなぜか、昆虫だけでなく不可思議な事件に遭遇してしまう。奇妙な来訪者があった夜の公園で起きた変死事件や、〈ナナフシ〉というバーの常連客を襲った悲劇の謎を、ブラウン神父や亜愛一郎に続く、令和の”とぼけた切れ者”名探偵が鮮やかに解き明かす。第10回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む連作集。

創元推理文庫 櫻田智也著『サーチライトと誘蛾灯』あらすじより引用

実は本屋の棚からなんとなく選んで買った作品でした。表紙の雰囲気に惹かれたのかも。

ところがこれが大当たり!人に薦めたくなるほど大好きな一冊になりました。

無類の虫好き青年が謎を解き明かす、というあらすじだけ読むと異色のミステリ物に感じますが、私はかなり正統派なお話だと思っています。

謎や解明が面白いだけでなく、ストーリーが緻密に編まれていて最後までドキドキしながら読み進められました。

が苦手な人でも読めます!と言いたいところですが、私は虫に苦手意識を持っていないのであまり無責任なことは言えず…でもまぁエキセントリックな挿絵がある訳じゃないので、そんなに気にならないんじゃないでしょうか?結局無責任なことを言ってしまいました。

謎解きとして完成している本はもちろん大好物なのですが、この本に関してはいつか目を逸らしていたかもしれない問題に自然とピントが合っていくような気がしています。作品を流れる柔らかい空気を損なわないままに大人のエゴイズムを描いていく手腕が素晴らしいです。

この続編の『蝉かえる』もとても良かったので、『サーチライトと誘蛾灯』がハマった人にはぜひともお薦めしたいです。

『与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記』澤田瞳子

【あらすじ】

奈良時代、東大寺の大仏造営事業が進む中、故郷から造仏所に徴発された真盾。信仰心など一片もないのに、仲間と共に取り組む命懸けの労役は苦難の連続。作事場に渦巻く複雑な人間模様も懊悩をもたらすばかり。だが、疲れ切った彼らには、炊屋の宮麻呂が作る旨い料理があった。一膳の飯が問いかける仏の価値とは⁉食を通して造仏に携わる人々の息遣いを活写した傑作時代小説。

光文社文庫 澤田瞳子著『与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記』あらすじより引用

目下読み進めているシリーズが、中公文庫から出版された「螺旋プロジェクト」。
この話については全てを読み終えたころにブログで書きたい…書けるかな?

その中の一冊『月人壮士』で作者:澤田瞳子さんと大仏鋳造に夢中になった私。さっそく時代小説フリーク気味の母に「大仏つくる話の本ってある?」と聞くと「あるよ」との返答が。
あるんかい。

そうして読み始めたのが『与楽の飯』。
大仏鋳造ミステリー、しかも美味しいごはん付き。面白くない訳がない組み合わせでした。

似たようなテーマを取り上げている作品がそもそも思いつかないので、こんな小説をもっと読みたい!と思っても叶わないのが残念なところ。というくらい、ジャンルそのものにも衝撃を受けました。

主人公が信心深くない性格なのがとても良いです。必然、読者も主人公:真盾らと一緒に「なんのために大仏を作るのか?」を考えることになります。

信仰と大仏、現実と食事。読み終わるころには美味しいごはんが食べたくなるでしょう。

『悪魔と詐欺師 薬屋探偵妖綺談』高里椎名

【あらすじ】

「当ててごらん。これらの事件には、共通点がある」喫茶室で毒死した男。マンションから飛び降りた会社員。プログラマーは列車事故で死に、書店員の娘は手首を切った。だが、それらすべては解決したはずの事件だったのだ。そこに「なにか」の意思が動いていたというのか――?おなじみ薬屋三人組、東西奔走す!!

講談社ノベルス 高里椎奈著『悪魔と詐欺師 薬屋探偵妖綺談』あらすじより引用

こちらは2023年に買った本ではなく、正確には2023年に良さを再認識した本です。

薬屋探偵妖綺談シリーズとの出会いはかれこれ15年程前に遡ります。記憶が定かではないのでサバ読んでたらすみません。

薬屋を営むちぐはぐな3人と人間離れした事件の数々は、当時中学生だった私の心に深く突き刺さったのをよく覚えています。
それから月日が流れ、多少の知識を上乗せした今の私が読む薬屋は、さらに視野角が広がったような気持ちにさせてくれました。

今回取り上げた『悪魔と詐欺師』は、シリーズ第3巻にあたるお話です。
性別も、年齢も、職業も違う人たちが、場所も、時間も、手段すらも違う死に方をする。それらに隠された共通事項と、見えない裏側で進行するもう一つのストーリー。

頭を一生懸命捻りながら読むのですが、最後の最後で「答え合わせ」がないことに愕然。
犯人が誰とかどうやってとかどうしてとか、WhoHowWhyも語られない、シリーズの中でも異色の一作です。

ぜひご自身で推理してみて欲しい一冊!

さいごに

趣味に目標を立てるのはなんだか方向を見失うような感覚がありますが、2024年はずばり「多ジャンルを読む」を目標としたいと思います。

すでに1月の時点で本格ミステリからライトノベルから学園頭脳バトルまであれこれ読んでいるので、幸先良い(?)スタートです。

なにも数値的なこだわりがある訳ではなく、ジャンルを偏らずに読むことで良い具合に思考がシャッフルされる感覚があるのです。
その感覚には固定観念をほぐしてくれる役割があるような気がして、私は「読むお薬」のようなものだと認識しています。
超・超・個人的な健康法!今後も実践していきます。

最後までご覧いただきありがとうございます。
それではまた~。

Author
東谷 アズマヤ
好きなものには実直に!気になるものには一直線!色んな知識や発見を食べて成長することに毎日命を燃やしています。それぞれの持つ「色」をそのままに、クロコで働く楽しさをお伝えします。